プライベートサウナという言葉から、どのような空間を想像するでしょうか。
誰にも邪魔されない。
他人の視線を気にしなくていい。
好きなタイミングでロウリュできる。
静かに、一人でサウナへ集中できる。
もちろん、それは個室サウナの大きな価値です。
しかし、高級プライベートサウナの施設を見ていくと、「一人になること」だけを目的としてつくられているわけではないことが分かります。
恋人や夫婦で利用する2人部屋。
友人たちと利用できる4人、6人の大型ルーム。
サウナ室の中で自然に会話できるよう、座り方まで工夫された空間。
サウナ後に飲み物や食事を楽しめるスペース。
さらには、仕事上の接待やチームでの利用まで想定した施設もあります。
個室とは、人を遠ざけるためだけのものではありません。
むしろ、
「誰と一緒にいるか」を自分で選べる空間
と考えた方が、プライベートサウナの本質に近いのかもしれません。
今回は、高級プライベートサウナにおける「人との距離」を考えます。

共同浴場では、人との距離を選べない
一般的なサウナ施設では、同じ時間に居合わせた利用者と空間を共有します。
サウナ室に何人いるか。
誰が隣に座るか。
水風呂が空いているか。
休憩場所で話し声が聞こえるか。
それらを自分で決めることはできません。
これも共同浴場ならではの文化であり、魅力です。
見知らぬ人たちが同じ空間で静かに過ごすことには、独特の心地よさがあります。
一方で、
恋人と話しながら入りたい。
友人とサウナを楽しみたい。
男女で一緒に利用したい。
仕事仲間と会話したい。
誰にも会わず、一人でいたい。
といった希望には対応しにくい部分があります。
完全個室になると、その前提が変わります。
知らない人と場所を共有する必要がありません。
その代わり、
一人で利用するのか。
二人で利用するのか。
仲間と利用するのか。
を自分たちで決められます。
プライバシーとは、必ずしも「孤独」を意味しません。
一緒にいる相手を限定できること。
それもまた、プライベートという価値です。
二人で入るサウナには、二人用の設計がある
LOCA THE CLASS. AOYAMAのROOM1は、2名利用を基本とした空間です。
約58.79㎡の中に、サウナ室、水風呂、温風呂、シャワーブース2室、化粧室2室、そして2台の休憩用ベッドが配置されています。
公式でも、恋人、ご夫婦、気の合う友人との利用を想定した部屋として紹介されています。
ここで重要なのは、単に「2人まで入れる」ということではありません。
水風呂や温風呂も2人で利用できる広さがあり、シャワーブースも2室、化粧室も2室、休憩用ベッドも2台用意されています。
つまり、
サウナだけを二人で共有し、その後は設備を取り合う
という構成になっていません。
二人で来た人が、最後まで二人のペースで過ごせるようにつくられています。
これは、ペア利用のサウナを考えるうえで重要なポイントです。
サウナ室には二人入れる。
しかし水風呂は一人ずつ。
シャワーも一つ。
休憩椅子も一脚。
これでは、一緒に来たはずなのに、途中から順番待ちが発生します。
高級なペア向けサウナでは、単に収容人数だけでなく、利用者の数と設備の数が揃っているかを見る必要があります。
「一緒にいる」と「同じことをする」は違う
二人でサウナへ来たからといって、すべて同じタイミングで行動する必要はありません。
一人はもう少しサウナに入りたい。
もう一人は先に水風呂へ行きたい。
一人は水風呂に入る。
もう一人はシャワーだけにする。
一人は休憩する。
もう一人は温風呂に入る。
同じ個室にいても、それぞれの身体の状態は違います。
第6回でも触れたように、プライベートサウナの自由とは、全員が同じ設定に合わせることではありません。
同じ空間にいながら、違う過ごし方ができること。
これは、人との距離を考えるうえでも重要です。
一緒にいる。
でも、ずっと会話しなくてもいい。
同じサウナへ入る。
でも、同じタイミングで出なくてもいい。
別々に休憩する時間があってもいい。
完全個室だからこそ、「一緒にいること」と「常に行動を合わせること」を切り離せます。
SAUNA OOOは、サウナを「会話する場所」としてつくる
人との距離を設計するサウナとして、非常に分かりやすいのがSAUNA OOOです。
施設自ら「コミュニケーションサウナ」を掲げており、TOKYO店には最大3名の「サンカクの部屋」と、最大6名の「シカクの部屋」が用意されています。
公式サイトでも、プライベート利用だけでなくビジネスシーンまで幅広い利用を想定しています。
さらに特徴的なのが、サウナ室そのものです。
SAUNA OOOでは、サウナ室を畳張りにし、休憩スペースにもフラットな小上がりを設けるなど、仲間同士で自然に語り合える空間を意識しています。
一般的なサウナベンチでは、人は同じ方向を向いて座ります。
横一列になり、前を見る。
これは静かにサウナへ集中するには適した配置です。
しかし、会話をする空間として考えると、人の身体が向いている方向も重要になります。
床に近い姿勢で座る。
身体の向きを変える。
相手の顔を見る。
楽な姿勢になる。
こうした小さな違いによって、サウナ室は「熱を受ける場所」から「人と時間を過ごす場所」へ変わります。
SAUNA OOOは、サウナの設備だけでなく、人同士がどう座るかまでコミュニケーションの設計に含めている施設と見ることができます。
サウナでは、普段とは違う会話が生まれる
サウナ室では、できることが限られています。
パソコンを開くことはできません。
仕事の資料を見ることもできません。
スマートフォンを持ち込まない施設も多くあります。
熱の中では、長く複雑なことをすることも難しくなります。
残るのは、
座る。
水を飲む。
ロウリュする。
休む。
話す。
という、ごく単純な行動です。
日常生活では、
テレビを見ながら話す。
スマートフォンを触りながら話す。
食事をしながら話す。
仕事をしながら話す。
ということが珍しくありません。
サウナでは、こうした「何かをしながら」が少なくなります。
だからといって、サウナに入れば必ず深い会話が生まれるわけではありません。
しかし、少なくとも、会話以外の刺激が減る環境ではあります。
SAUNA OOOがプライベートだけでなくビジネス利用も想定しているのは、サウナを単なる入浴設備ではなく、普段とは違う状態で人と向き合う場所として考えているからでしょう。
大人数になれば、「広い」だけでは足りない
LOCA THE CLASS. AOYAMAのROOM2は、4名利用を基本とし、最大6名まで利用できる大型ルームです。
広さは85.86㎡。
サウナ室は3段構成で、大型の水風呂、2室のシャワーブース、2室の化粧室、4台の休憩用ベッド、大型プロジェクターなどを備えています。
公式サイトでは、友人同士やサウナ仲間だけでなく、カップルデート、パーティー、仕事上の接待などの用途も案内されています。
ここでは、ROOM1とは空間の役割が変わっています。
ROOM1が二人でゆっくり過ごす空間だとすれば、ROOM2は、複数人が同じ時間を共有する「滞在空間」に近づきます。
人数が増えると、単に部屋を広くするだけでは足りません。
必要になるのは、
- 同時に使えるサウナ室の広さ
- 複数人で入れる水風呂
- 人数分に近い休憩場所
- 複数のシャワー
- 身支度が重ならない化粧室
- 会話できるテーブル
- 飲み物を置ける場所
- 長時間滞在しても窮屈にならない余白
です。
人数が増えるほど、「一つの設備を何人で共有するか」が体験の質を左右します。
大型の高級プライベートサウナでは、最大収容人数だけでなく、その人数で本当に快適に過ごせるかを見る必要があります。
高級サウナの広さは、「距離を取れる」ためにも使われる
人と過ごすための空間だからといって、常に近くにいる必要はありません。
むしろ複数人で長い時間を過ごすほど、適度な距離が必要になります。
サウナ室では話す。
水風呂では静かになる。
休憩ではそれぞれ別のベッドに横になる。
誰かはプロジェクターを見る。
誰かは目を閉じて休む。
誰かは飲み物を飲む。
そして、また自然に会話が始まる。
こうした使い方ができるためには、一つの大きなソファに全員を集めるだけでは不十分です。
一緒に過ごせる場所と、一人になれる場所の両方が必要になります。
高級プライベートサウナの広い面積は、豪華さを演出するためだけに存在するのではありません。
人同士が近づいたり、離れたりできる「余白」でもあります。
「話せるサウナ」と「静かなサウナ」は対立しない
サウナでは、静かに過ごしたい人も少なくありません。
だから、会話を楽しむサウナと、静かに入るサウナは相反するように見えるかもしれません。
しかし、完全個室では、この二つを両立できます。
二人で話したければ話す。
静かになりたければ静かになる。
音楽を流したければ流す。
必要なければ止める。
誰かに会話を強制されることも、周囲の会話に巻き込まれることもありません。
つまり、完全個室の価値は、
会話できること
ではなく、
会話するかどうかを自分たちで決められること
にあります。
これは、第6回で考えたカスタマイズとよく似ています。
温度を変えられることが重要なのではなく、必要なら変えられること。
音楽を流せることが重要なのではなく、必要なら消せること。
人との関係も同じです。
話してもいい。
話さなくてもいい。
一緒に入ってもいい。
一人で休んでもいい。
選択できることが、プライベートサウナの自由です。
カップル利用では「男女一緒に入れる」以上の価値がある
プライベートサウナがカップル利用と相性がよい理由として、男女が同じ空間を利用できることが挙げられます。
一般的な公衆浴場では、男女は別々に入浴します。
一緒に施設へ行ったとしても、サウナの時間そのものは別行動になることが多くなります。
完全個室で水着着用が可能な施設では、同じサウナ体験を共有できます。
しかし、本当の価値は「一緒に入れる」ということだけではありません。
ロウリュをする。
水風呂へ入る。
相手が休憩している間に、自分はもう一度サウナへ入る。
飲み物を飲む。
横になって話す。
こうした一連の時間を共有できることにあります。
LOCA THE CLASS. AOYAMAのROOM1が、2人用の設備を揃えたうえで恋人や夫婦の利用を想定しているのも、そのためです。
デート向けのサウナを考えるときも、内装のおしゃれさだけではありません。
二人が無理なく別行動でき、また自然に同じ場所へ戻ってこられるか。
そこまで見ると、空間設計の違いが見えてきます。
接待にサウナを使うという考え方
LOCA THE CLASS. AOYAMAは、ROOM2について仕事上の得意先との接待利用も案内しています。法人会員制度も用意されています。
SAUNA OOOも、公式にビジネスシーンでの利用を想定しています。
一見すると、サウナと接待は少し意外な組み合わせです。
しかし、高級レストランやゴルフと同じように考えると、その意味が見えてきます。
仕事だけをする場所ではない。
でも、仕事上の関係を持つ人と一定の時間を共有する。
会議室ほど形式的ではない。
飲食店ほど周囲の人もいない。
スマートフォンや資料からも一度離れる。
そこに、サウナという共通体験があります。
もちろん、誰にでも適した接待方法ではありません。
サウナが苦手な人もいますし、健康状態や好みへの配慮も必要です。
だからこそ、相手との関係性や嗜好を理解したうえで選ぶ、かなり限定的な使い方でもあります。
しかし、高級プライベートサウナが接待まで視野に入れるようになったことは、サウナが単なる「汗をかく設備」から、人と時間を共有する場所へ広がっていることを象徴しています。
サウナの後まで含めて「一緒に過ごす」
SAUNA OOO TOKYOには、サウナだけでなくカフェスペースもあり、サウナドリンクやかき氷などを楽しめるようになっています。
ここにも、コミュニケーションサウナという考え方が表れています。
サウナ中は熱いので、長く話し続けることはできません。
水風呂では会話どころではないこともあります。
休憩では、静かにしていたい人もいます。
しかし、サウナを終え、着替えた後なら、また違う時間が始まります。
「あのロウリュ熱かったね」
「2セット目が一番よかった」
「水風呂、冷たかった」
そんな感想を話す時間まで含めて、一つの体験になります。
高級サウナを「滞在」として考えるなら、サウナ室の外に何があるかも重要です。
ラウンジ。
カフェ。
飲み物。
食事。
ソファ。
身支度のできる空間。
サウナが終了した瞬間に施設から出なければならないのか、それとも、その余韻を誰かと共有できるのか。
ここにも施設ごとの設計思想が現れます。
一人利用にも、人との距離を選ぶ価値がある
ここまで複数人利用を中心に見てきましたが、一人で利用する価値が小さくなるわけではありません。
むしろ、人との距離を自由に選べるという考え方を突き詰めれば、
今日は誰とも会いたくない
という選択も同じです。
共有サウナでは、完全に一人になることは難しい。
しかし完全個室なら、
会話をしない。
誰にも見られない。
誰かが入ってくることもない。
自分のタイミングだけで動く。
という時間をつくれます。
同じ施設でも、
今日は一人。
別の日は恋人と。
また別の日は友人たちと。
という使い方ができます。
プライベートサウナとは、一人用のサウナではありません。
利用する人数そのものを選べるサウナと考えた方が正確です。
複数人で利用するサウナを見るためのチェックポイント
複数人で高級プライベートサウナを利用するときは、最大定員だけでなく、次の点を確認してみましょう。
人数分の休憩場所があるか
4人で利用するのに椅子が2脚しかなければ、休憩のタイミングをずらす必要があります。
サウナ室に無理なく座れるか
「最大6名」と書かれていても、6人で快適なのか、かなり密集するのかは別の問題です。
水風呂を何人で使えるか
全員一緒に入る必要はありませんが、順番待ちが長くならない広さかは確認したいところです。
シャワーと化粧室はいくつあるか
人数が増えるほど、退出前の身支度が重なります。
会話できる場所があるか
サウナ室だけでなく、休憩スペースやソファ、テーブルなどがあると滞在の幅が広がります。
一人になれる余白があるか
複数人で利用しても、それぞれが静かに休める距離が確保されているか。
利用時間に余裕があるか
人数が増えるほど、シャワーや身支度にも時間がかかります。
部屋が大きくても、時間が短ければ慌ただしくなります。
高級なグループ向けサウナでは、単に「大人数で入れる」ことよりも、人数が増えても体験の質が崩れないことが重要です。
まとめ:個室が守るのは、「一人の時間」ではなく「関係性」である
完全個室のサウナというと、一人で静かに入る場所を想像しがちです。
しかし、高級プライベートサウナを見ていくと、それだけではないことが分かります。
LOCA THE CLASS. AOYAMAのROOM1は、恋人や夫婦など二人が最後まで余裕を持って過ごせるよう、設備そのものを2人利用に合わせる。
ROOM2では、最大6名までの大型空間を用意し、友人同士からパーティー、ビジネス利用までを想定する。
SAUNA OOOは、サウナそのものを「コミュニケーションサウナ」と位置づけ、座り方や休憩空間まで「語り合うこと」を前提に設計する。
方向性は違っても、共通していることがあります。
それは、個室を単なる壁として考えていないことです。
壁の外にいる知らない人を遮断する。
その代わり、壁の中に誰を迎えるかは自分たちで選ぶ。
一人で過ごしてもいい。
二人で静かに過ごしてもいい。
仲間と話してもいい。
途中でそれぞれ別々に休んでもいい。
個室が守っているのは、「一人でいること」そのものではありません。
その時間を、誰と、どのくらいの距離で過ごすのかを自分たちで決められること。
それが、プライベートサウナのもう一つの価値です。
高級サウナが広い部屋や複数のシャワー、人数分のベッド、テーブル、ラウンジまで用意する理由も、そこにあります。
サウナ環境を設計するということは、温度や湿度を設計することだけではありません。
人と人との距離まで含めて、その時間全体を設計すること。
高級プライベートサウナは、そこまで踏み込んだ空間になりつつあります。
次回は、これまでとは少し違う「見えない設備」を取り上げます。
豪華な内装。
高性能なサウナストーブ。
冷たい水風呂。
広い休憩スペース。
こうした目に見える設備の裏側には、清掃、設備管理、緊急時対応、扉の構造、スタッフ体制など、利用者が普段ほとんど意識しない仕組みがあります。
高級サウナの最後の条件は、「安心して何も考えずに過ごせること」なのではないか。
第8回では、高級サウナにおける安全と運営の設計を考えます。