従業員の健康維持やリフレッシュを目的として、サウナの利用料金を会社が負担する。
サウナ好きの経営者であれば、一度は考えたことがあるかもしれません。
最近では法人利用に対応するサウナ施設もあり、会社の福利厚生としてサウナを導入すること自体は、以前より現実的になっています。
では、「全社員が利用できるようにすれば福利厚生費にできる」のでしょうか。
実は、そこまで単純ではありません。
会社が福利厚生施設を用意するケースと、従業員が個人的に利用したサウナ料金を後から補助するケースでは、税務上の考え方が異なる場合があります。
今回は、サウナを福利厚生として導入するときに知っておきたい、
法人契約
利用料金の補助
現物給与
給与課税
の違いを整理します。
※本記事は2026年11月時点の税制・国税庁公表資料をもとに一般的な考え方を整理したものです。具体的な税務処理は契約内容や利用実態によって異なります。実際の制度導入・申告については税理士等の専門家へご確認ください。

福利厚生なら「給与にならない」とは限らない
会社が従業員のために何かを負担すると、従業員は金銭以外の利益を受けることがあります。
税務上、このような利益は「経済的利益」と呼ばれ、原則として給与所得に含まれる可能性があります。国税庁も、福利厚生施設を無償または低額で利用できることなどを「現物給与」の一例として挙げています。
ただし、すべての福利厚生を給与として課税するわけではありません。
所得税基本通達36-29では、会社が役員・従業員の福利厚生施設の運営費等を負担した場合、その経済的利益が著しく多額である場合や、役員だけを対象としている場合を除き、課税しなくて差し支えないとしています。
つまり、適切に設計された福利厚生制度であれば、従業員が受けた利益を給与として課税しなくてよいケースがあります。
問題は、何をもって「福利厚生」と考えるかです。
「会社が施設を用意する」と「個人の遊興費を補助する」は違う
分かりやすく、2つの制度を比較してみましょう。
A社の場合
・会社が特定のサウナ施設と法人契約を結ぶ
・全従業員が一定の条件で利用できる
・会社が契約料金や施設利用に関する費用を負担する
B社の場合
・従業員は好きなサウナを自由に選ぶ
・利用後、領収書を会社へ提出する
・会社が「サウナ補助」として月5,000円まで支給する
どちらも従業員のリフレッシュを目的としているかもしれません。しかし、税務上は同じとは限りません。
国税庁はカフェテリアプランに関する質疑事例で、旅行、レジャー用品、映画やスポーツ観戦など、個人が本来負担する趣味・娯楽費を会社がポイントで補助する制度について、その補助相当額を給与課税するとしています。
一方で、会社が契約している福利厚生施設について、全従業員が一律に受けられる一般料金と契約料金との差額については、課税しなくて差し支えないとしています。
サウナについて個別の税務判断が示された事例ではありませんが、会社が福利厚生の仕組みとして施設を提供することと、従業員個人の趣味・娯楽費を後から会社が補填することは区別して考える必要があることが分かります。
「月5,000円までサウナ代補助」は注意が必要
福利厚生制度として考えやすいのが、全社員を対象に、月5,000円までサウナ・温浴施設の料金を会社が負担するという制度です。
一見すると公平です。全員に同じ上限額があり、役員だけの特典でもありません。
しかし、従業員が好きな施設を選んで私的に利用し、その料金を会社が後から補填する方式は、先ほどのカフェテリアプランの旅行・レジャー費補助と似た性質を持ちます。
「全社員対象だから非課税の福利厚生になる」と断定するのは危険です。
仮に給与として扱われる場合、会社側で福利厚生費と入力して終わりではなく、従業員側の給与所得や源泉徴収などの処理も検討する必要があります。
大切なのは、公平であることと、非課税であることは別問題という点です。
法人契約なら必ず福利厚生になる、でもない
逆に、「ではサウナ施設と法人契約を結べば大丈夫」とも言い切れません。
福利厚生施設の利用による利益について国税庁が課税しなくて差し支えないとしているのは、一定の条件を満たす場合です。
特に注意したいのが、利益が著しく多額でないことと、役員だけを対象とした制度でないことです。
例えば、
一般社員はほとんど利用できない。実際に利用しているのは社長だけ。年間数百万円の高級会員制サウナを会社が負担する。
という制度を「福利厚生」と呼んでも、その名称だけで税務上認められるわけではありません。
福利厚生費として処理するのであれば、
・誰が対象なのか
・どのような条件で利用できるのか
・金額は社会通念上妥当なのか
・実際に従業員も利用できる環境になっているのか
という実態を見る必要があります。
「全社員が利用できる」は重要なポイント
国税庁のカフェテリアプランに関する質疑事例では、非課税となる福利厚生について、役員・従業員にとって均等であることが求められています。
職位や報酬額に比例して福利厚生ポイントを増やす制度については、全体が課税対象になるとしています。
サウナの法人契約でも、社長は月10回、役員は月5回、一般社員は月1回というように役職によって利用可能額を変える制度は、単純な福利厚生として考えにくくなります。
反対に、全社員が同じ条件で予約できる。利用可能日や補助内容も共通している。特定の役員だけが優遇されていない。という制度の方が、福利厚生としての性質を説明しやすくなります。
利用しなかった人に現金を渡す制度にも注意
例えば、「サウナを利用しない人には、その分5,000円を給与に上乗せする」という制度を考えてみましょう。
一見公平に見えます。
しかし、福利厚生における非課税の経済的利益は、基本的に現物で提供されることが重要です。
国税庁もカフェテリアプランについて、ポイントを現金へ換えられるなど換金性がある制度は、全体を課税対象とするとしています。
つまり、サウナを使う人にはサウナ料金、使わない人には同額の現金という制度にすると、給与としての性質が強くなります。
福利厚生は必ずしも、全員が同じ金額を受け取れることを意味しません。
全員に同じ利用機会が提供されていることと考えた方が分かりやすいでしょう。
従業員だけのレクリエーションという方法もある
サウナを福利厚生として利用する方法は、法人契約だけではありません。
会社行事としてサウナ施設を貸し切り、従業員の懇親・慰安のために利用する方法も考えられます。
法人税上、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などに通常要する費用は、交際費等から除かれ、福利厚生費などとして扱われます。
ただし、これも「社員イベント」という名称だけで判断されるわけではありません。
・一部の役員だけで高級個室サウナへ行った
・参加者が極端に限定されている
・費用が著しく高額である
といったケースでは、通常の従業員慰安と同じようには考えられないでしょう。
旅行について国税庁が示している考え方でも、企画・目的・規模・参加割合・会社と従業員の負担割合などを総合して判断するとされています。
サウナイベントも、実態を見るという点では同様です。
福利厚生として導入するなら「制度」にする
会社がサウナを福利厚生として導入するのであれば、その都度社長の判断で料金を支払うより、最初から制度として整理しておく方が説明しやすくなります。
例えば、
対象者
全従業員を対象とする。
利用条件
月○回まで、または年間○回まで。
対象施設
会社が契約する施設を明確にする。
費用負担
会社負担額と本人負担額を決める。
予約方法
会社の福利厚生制度として利用したことが確認できる方法にする。
換金不可
利用しなかった分を現金で支給しない。
利用記録
誰がいつ利用したか確認できるようにする。
こうしたルールを社内規程などに残しておけば、「なぜ会社がこの費用を負担したのか」を後から説明しやすくなります。
福利厚生費として処理できなくても「会社経費にならない」とは限らない
ここは混同しやすいところです。
ある支出が非課税の福利厚生として認められず、従業員への給与として扱われたとしても、会社の支出そのものが必ず損金にならないという意味ではありません。
一般従業員への給与であれば、通常は会社の給与として損金となり得ます。
ただし、その場合には、
従業員側では給与所得になる。
会社側では源泉徴収等の給与処理が必要になる。
という別の問題が生まれます。
つまり、福利厚生費として処理できるかと、会社のお金として支出できるかと、従業員に給与課税されるかは、それぞれ別の問題です。
サウナ福利厚生を考えるときは、この3つを分けて考える必要があります。
サウナ福利厚生のケース別整理
大まかに整理すると、次のようになります。
| ケース | 注意するポイント |
|---|---|
| 全社員が同一条件で使える法人契約 | 福利厚生として比較的説明しやすい |
| 契約施設の一律割引 | 国税庁にも非課税扱いの例あり |
| 好きなサウナ代を月額で補助 | 個人の娯楽費補填として給与課税の検討が必要 |
| 利用しなかった人へ現金支給 | 給与としての性質が強い |
| 役員だけ利用可能 | 非課税福利厚生の扱いから外れる |
| 従業員全体の慰安イベントとして利用 | 福利厚生費となる可能性があるが実態で判断 |
| 極端に高額な会員制施設 | 「著しく多額」に該当しないか注意 |
あくまで一般的な整理であり、実際の判断は契約や利用実態によって変わります。
まとめ:「社員のため」だけでは福利厚生にならない
サウナを福利厚生として活用すること自体に問題があるわけではありません。
むしろ、施設との法人契約や社員向けプランなどを活用すれば、従業員が利用できる福利厚生制度として設計することは可能です。
ただし、
「社員の健康のため」
「全社員が対象だから」
「福利厚生費という勘定科目にしたから」
という理由だけで税務上の取扱いが決まるわけではありません。
重要なのは、
・誰が利用できるのか
・どのような形でサービスを提供するのか
・会社が施設を提供しているのか、個人の娯楽費を補填しているのか
・利益の額が社会通念上妥当なのか
という制度の実態です。
福利厚生とは、単に会社がお金を出すことではありません。会社が従業員全体のために、利用できる環境を用意すること。
サウナを福利厚生として導入するなら、この考え方から制度をつくると整理しやすくなります。
次回は、さらに判断の難しい「社長・役員のサウナ代」を取り上げます。
「社長が健康でいることは会社に必要だから、サウナ代も経費になるのでは?」
一見もっともらしいこの考え方は、税務上どこまで通用するのでしょうか。
次回「【2026年最新】社長・役員のサウナ代は会社経費になる?──『経営者の健康管理』は理由になるのか」で詳しく整理します。